COLUMN / VOL.7
1年を通じて最もよく着る洋服のひとつがTシャツではないでしょうか?
Tシャツの魅力は一体どこにあるのでしょう。
まずは、気軽に選べるデザインの豊富さが挙げられるのではないでしょうか。さまざまなデザイン、カラー、素材のTシャツが多くのブランドやメーカーから出ていて、ファッション雑誌でもTシャツの特集をしていることがしばしばあります。
ひとことにTシャツと言っても、カジュアルなものから、オフィスに着ていってもOKなほどキチンと感があるもの、1枚でお洒落がバッチリ決まるデザイン性の高いものなど、いろいろなタイプがあって、目移りしてしまうことも。デザインの幅が広いと選ぶのも、着るのも楽しくなります。
そしてもうひとつの大きな魅力は、その使いやすさにあるのではないでしょうか。夏に1枚でさらっと着られるのはもちろん、重ね着のインナーとして、スポーツをするとき、家の中でのリラックス着として、などさまざまなシーンでTシャツは大活躍。着まわしもできて、心強いアイテムと言えますね。
さらに、多くのTシャツは自宅で手軽に洗えるのも魅力です。おしゃれ着用の洗剤などを使えば、綿素材のTシャツでも、洗濯後ののび・ヨレに悩まされず、簡単・キレイに洗えるので、気負うことなく着られます。
こんなふうにとても便利なTシャツですが、少し困ったこともありませんか?
それは、汗の悩み。Tシャツは肌に直接触れることが多いので、汗をかいたときに汗染みができやすいなど、汗の影響を受けやすい側面があります。
汗染みだけならまだ、洗濯して落とせばよいのですが、気が付いたら首や脇の部分に黄色い染みができていたという経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。あの黄色い染みは、見つけるとガッカリするもの……。特にそれがお気に入りのTシャツだったりすると、残念な気持ちでいっぱいになりますよね。
こんなことにならないためには、どうすればよいのでしょう? Tシャツに汗が響かないようにする方法や制汗デオドラント剤の選び方など、Tシャツの汗対策をお伝えしていきます。
私たちが汗をかく理由はコレ
暑い夏場や、スポーツをしたあと、半身浴をしたときなど、汗をかくタイミングはいろいろとあります。
サウナにしばらくいただけで、体重が数百グラム減る、ということもあるくらい、一度に大量に汗が出ることもあります。
この汗の主な役割は体温調節です。
私たちの体は、だいたい36~37度くらいに体温が保たれるように、体温が上昇すれば汗をかき、熱を逃がすことによって調節しています。
体温調節は常に行われているので、私たちは何もしていなくても汗をかきます。
それに加えて、通常は何かしら活動をしているので、だいたい1リットルの汗を1日にかくと言われています。
この汗は私たちの皮膚に存在する「汗腺」と呼ばれる場所から分泌されます。
汗腺は2種類あり、「エクリン腺」と「アポクリン腺」に分けられます。
体温調節のために分泌されるのは、主に全身に存在するエクリン線から出る無色無臭の汗です。
Tシャツのときに心配な脇汗、
どの色なら目立たない?
夏場は汗の量が増えます。それにも関わらず薄着になるので、洋服についた汗が目立ってしまいます。特に脇は汗をかきやすい場所なので、脇汗が気になる人も多いことでしょう。
暑い季節に着る機会が増えるTシャツで、脇汗を目立たなくするには、Tシャツの色・素材・柄選びを工夫するのがポイントです。
汗染みが目立つのは、Tシャツの乾いた部分と湿った部分の色が違って見えるから。つまり、色の変化が分かりにくいTシャツを選べばよいのです。
汗を吸収すると色が濃くなり、元の生地の色との差が目立つグレーや鮮やかな青、ピンクなど、薄い色のTシャツは、汗をたくさんかきそうな日には避けた方が無難。色の変化が出にくい白や黒、ネイビーのTシャツを選ぶとよいでしょう。
また色は変わりやすくても、すぐに吸収した汗が乾く、速乾性の高い素材のTシャツなら、汗染みが目立たなくなるのが早く、おすすめです。
さらに木の葉を隠すなら森の中に、ということで、柄物のTシャツなら生地の一部が湿って色が変わっていても気づかれにくく、うまくごまかせることも。
今日はたくさん汗をかくと分かっている日には、Tシャツの色や素材、柄を工夫することで、脇汗を目立たせずに過ごしてみましょう。
Tシャツやポロシャツにも、
インナーや脇汗パッドを忘れずに
汗染みが目立たないのは、白や濃い色、速乾性の素材のもの、柄物のTシャツということは分かりました。
でも、Tシャツやポロシャツなどのシャツ類はかわいい色がたくさん出ているし、たまにはコットンのTシャツだって着てみたい! いろいろなシャツを脇汗を気にせずに着られれば、それに越したことはありませんよね。
そんなときには、インナーの出番です。
Tシャツやポロシャツを着るときに、中に汗を吸い込んでくれるインナーを着ておけば、汗染みを気にせずに好きな色のTシャツ・ポロシャツでおしゃれが楽しめます。
インナーにはいろいろなタイプがあるので、ご自身の汗のかき方やその日の気温や天候などに合わせて選んでくださいね。
例えば、Tシャツタイプのインナーは脇をしっかり覆うので、汗の吸収力が高く安心感が違います。ただし、面積の小さいアウターを着るときには、インナーがはみ出ないように注意が必要です。
ボレロタイプのインナーは、脇をしっかりサポートしつつ、襟まわりが大きく開いているものが揃っていて、首まわりの開いたアウターを着るときに便利です。
夏に活躍するキャミソールタイプのインナーにも、脇の部分に汗とりパッドが付いているものがあります。パッドには小さいものから大きいものまであるので、シーンに応じて選べます。
キャミソールタイプのインナーは、腕の部分がないため、パッドが浮いてしまうことも。時々、脇にフィットしているかどうかを確認するとよいでしょう。
また、インナーを着るのは暑いというときには、脇汗パッドの出番です。
脇汗パッドは、パッドにバンドが付いていて、肩にかけて使用する強力なタイプのものから、アウターに響きにくい脇に直に貼るタイプのもの、薄手の洋服に貼るタイプのものまで、さまざま種類があります。
着用するアウターの形に応じて目立ちにくいものを選べるのが嬉しいですね。
もし、どうしてもインナーやパッドなしでさらりとTシャツを着たいと思うなら、デザインは限られてしまいますが、汗染みが目立たないように加工された「汗染み防止Tシャツ」という商品もあります。
Tシャツの汗染み阻止に役立つ
制汗デオドラント剤
インナーやパッドなどは脇の汗染み防止に役立つかもしれませんが、脇の下がもたついた感じになるのがイヤ、という方もいるでしょう。そんなときには、制汗デオドラント剤の出番です。
制汗デオドラント剤にはさまざまなタイプがあります。
スプレータイプ、ミストタイプ、シートタイプ、ロールオンタイプ、クリームタイプなど様々なものが販売されています。
その中でロールオンタイプやスティックタイプはいずれも肌に直接塗れて密着し、制汗・防臭効果が長続きします。制汗剤はタイプによって適した使用シーンや効果が異なるので、目的に合ったものでお好みの使用感のものを選んでくださいね。
覚えておいて損はない!
汗を止めるツボ
その他に、内面から汗を止めるアプローチをする方法もあります。
そのひとつがツボです。一説によると、私たちの体には365以上ものツボがあると言われています。
東洋医学的にはその中には汗を止める効果があるツボもあるのです。そのうちのいくつかを紹介しましょう。
Tシャツの上からこっそり圧迫することで効果が期待できるツボが大包(だいほう)。場所は、脇に手を挟んだときに小指あたりに来る場所で、脇の下の第六肋間にあります。
大包は、舞妓さんがお化粧崩れを防ぐために、汗対策として帯で圧迫していると言われるツボです。このツボは主に、顔や脇の下の汗など上半身の汗に効果を発揮するので、Tシャツを着ていて、急に汗をかいてきたときなどは、腕組みのフリをして大包をぎゅっと圧迫すると良さそうです。
背中にある身柱(しんちゅう)は、首の後ろの付け根にある骨、椎骨の出っ張りから、三つ分背骨を下がった下のくぼみにあるツボです。首を倒して前かがみになると分かりやすいかと思います。
身柱には、体の熱を静める効果があり、代謝を整えてくれると言われていて、汗を抑えることも期待できます。
ちょっと押しにくいところにありますが、背中をかくついでに、中指でぐいぐいっと押してみてください。
足首のあたりにある復溜(ふくりゅう)は、水分の代謝をコントロールしてくれるツボ。足の内側のくるぶしの中心から指2、3本分上に上がった、アキレス腱と骨の間にあります。
復溜は、汗とともに足のむくみも感じるような場合におすすめ。疲労回復や冷え性、生理痛の緩和などにも効果があると言われています。ツボの部分をやさしく、ゆっくりと揉んでみましょう。
これらの場所を覚えておけば、汗が出そうだなと思ったときにそっと押せるので安心ですね。
女性に優しい大豆製品は、
汗にも効く
ツボのほか、食事を見直すことも、脇汗を抑えるのに効果があります。
おすすめはイソフラボンを豊富に含んでいる大豆製品。
イソフラボンは、女性ホルモンに似た働きをして、女性ホルモンのバランスを安定させ、ひいては自律神経のバランスを整えると考えられています。
体温調節の必要がないような、暑すぎも寒すぎもしないときに過剰に汗をかく場合は、自律神経のうちの交感神経の働きが活発になりすぎていることが考えられるので、自律神経のバランスを整えることで改善が期待できます。
大豆製品といえば、調味料では醤油に含まれており、その他、納豆やみそ汁、豆腐などがあります。これらは、和食中心の生活をすることで、自然と摂取することができます。
また、汗のニオイを抑えるのに効果的な食品も、実は和食に多いのです。ビタミンEやビタミンC、カテキンなど酸化を防ぐもの、梅干や海草類など体内で乳酸などの発生を抑えるもの、そしてアンモニアなどニオイ物質の発生を腸内で抑える食物繊維やオリゴ糖などは、いずれも和食の主な食材に含まれます。
「和食は健康に良い」とよく言われますが、発汗に影響する自律神経や汗のニオイにも効果があるとなると、ぜひ積極的に取り入れたいですね。
まとめ
気が付いたらできているTシャツの黄ばみや汗染み。今年こそ脇汗に悩まずに、お気に入りのTシャツを着られるようにしたいものですね。
好きな洋服を快適に着られるだけで、気持ちが明るくなったり、お出かけが楽しくなったりします。
毎日をハッピーに過ごすためにも、悩ましい汗対策は怠れません。
ご紹介した方法の中には、汗そのものを抑えるための対策や、Tシャツに汗が影響しないようにする方法など、今すぐ試せるものがたくさんあります。覚えておいていただければ、きっと「汗だ……、どうしよう」と思ったときに役立つはずです。汗をかいても、上手にサッと対処できると思えば、焦らないで済むので、心にゆとりもできますね。
汗対策の中でも、生活習慣の改善などは少し時間がかかるものです。暖かい季節に備えて、ぜひ早めに実践してみてくださいね。
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PROFILE
監修者:医学博士
五味常明先生昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。流通経済大学スポーツ健康学部、客員教授。