COLUMN / VOL.2
暑い夏はもちろん、冬でも私たちは汗をかきます。汗をかくこと自体は生理現象なので誰にでもあることなのですが、汗をめぐる悩みやトラブルにストレスを感じることはありませんか?
すぐに思いつく汗の悩み、トラブルとしては、汗のイヤなニオイ、そして洋服に汗が染みてしまう汗染み・黄ばみなどがあります。どちらも、度合いによっては深刻な悩みになることも。
今回は、汗の悩みやトラブルのなかから、汗染みと黄ばみについてお伝えしていきます。
気が付くと、大切な洋服の首元や脇などが黄ばんでしまったり、黒ずんでしまったりしていた、という経験のある方もいるのではないでしょうか。白いTシャツやブラウス、ワイシャツなどは特に黄ばみが目立ちやすく、気になるものです。
黄ばみがついた服を着ていると、「不衛生そう」「だらしなさそう」「ニオイがしそう」などと思われてしまうんじゃないかと心配になってきますよね。ビジネスシーンでは身だしなみで、「信用できる・できない」が判断されてしまう可能性だってあります。また、大切な人とのデートでも「きちんとしていない人なのかな?」とマイナスの印象を与えてしまうかも。
このようなネガティブなイメージを持たれないためには、清潔感を意識した身だしなみが大切です。
特に、初対面の場では、外見から多くの印象を受けます。英語のことわざには、「First impressions are the most lasting(最初の印象が最も長く続く)」というものもあるくらい。
第一印象に大きな影響を与える身だしなみはとても大切ということなのです。
洋服の汗染みや黄ばみは気を付ければ防げて、落とすことだってできるもの。汗染みや黄ばみができる原因や対策方法、ぜひ参考にしてください。
黄ばみの原因を知っていますか?
お気に入りの洋服、着続けていると、いつの間にか黄色い染みが……。これはもしかして黄ばみ? せっかく買った洋服が台無しになっちゃって残念。もしかして、もう着られないのかな?こんな悲しい経験はありませんか?
黄ばみの原因は、汗の中に含まれる「リポフスチン」という色素と皮脂の酸化。
私たちの体には、エクリン腺とアポクリン腺という汗腺があります。エクリン腺は全身にあり、そこから出る汗はさらっとしています。成分の99%が水分で1%はほぼ塩分です。そして、ニオイや色はありません。
それに対しアポクリン腺は、体の中でも脇や耳、デリケートゾーン、へそなどに集中していています。アポクリン腺から出る汗にはタンパク質や脂質などが多く含まれており、その中にはリポフスチンも存在します。
アポクリン腺から出る汗に含まれるリポフスチンが、服に付いて沈着するのが黄ばみの正体のひとつです。つまり、アポクリン腺が集中しているところでは、黄ばみのリスクが大きいのです。
黄ばみはワキガとも関係あるの?
アポクリン腺が黄ばみの原因物質を出すなんて……。アポクリン腺はやっかいな存在ですね。
しかもこのアポクリン腺、黄ばみだけでなくニオイにも関係しているのです。ワキガの主な原因は、アポクリン腺から出る汗にあると言われています。
エクリン腺から出る汗も、アポクリン腺から出る汗も、それ自体は無臭です。
ただし、アポクリン腺から出る汗には、脂質やタンパク質、アンモニアなどの成分が豊富に含まれています。これらが、皮膚表面に存在する常在菌を増殖させる原因となります。
常在菌が増殖すると、「分解臭」が発生します。「分解臭」は、汗の成分や皮膚表面の皮脂や垢が菌によって分解されるときに発生するもの。また汗をかくと、皮脂が汗の成分に含まれる鉄イオンによって酸化されて発生するツンとしたニオイ「酸化臭」も発生します。
さらに、エクリン腺から出る汗も、このニオイを拡散させるのに一役買っています。エクリン腺から出る汗は水と塩分を中心にできているので、もちろん蒸発します。蒸発する時に、アポクリン腺から出た汗から生まれたニオイを一緒に蒸発させてしまうというメカニズムなのです。
衣類が黄ばみやすい人は、アポクリン腺が多く、ニオイの元となる物質もたくさん分泌されているので、ワキガでもある可能性が。自分では気づいていなくても、汗が元となるニオイには注意した方がいいかもしれません。
汗染みからの変色、
「黄ばみ」の防ぎ方
黄ばみ予防の基本はまず、こまめに洗濯をして汗染み汚れを落とすこと。
黄ばみの元となるのは、着用する度に洋服に付く汗や皮脂などの汚れです。汗や皮脂の汚れは、洗濯をしても落としきれずに残ってしまうと、放っておけばおくほど繊維の奥に溜まり、落ちにくくなります。
汗や皮脂などの汚れが衣類の繊維の奥に残る原因の一つは、詰め込み洗い。洗濯機いっぱいに洗濯物を入れるのをやめて、7割程度の容量までで洗うようにすると汚れが残りにくくなり、黄ばみの発生を予防できます。さらに、皮脂汚れに効果の高い液体洗剤や、液体酸素系漂白剤を一緒に使うのも黄ばみ防止に効果的です。
この他、汗を抑える制汗デオドラント剤を使ったり、汗とりパッドや汗とりインナーを着たりして、衣類に直接汗を染みこませないようにしておくことも大切です。
黄ばみの元となる汗染み
汚れを万全に落とすなら
脇汗用のパッドを使ったのに、汗が染みてきて衣類に付いてしまった……。
そんなときは、汗染みができた場所を洗濯前に前処理をしましょう。汗染みの部分に液体洗剤を直接塗って手洗いしたり、シミ抜きをしておくなどしておけば、そのまま洗ったときとは全く違う仕上がりになります。
黄ばみに効果的な
洗濯方法を教えます
いろいろ気をつけていたのに、どうしても落ちない黄ばみができてしまった……。そんな時は、シミ用の部分洗い洗剤や液体酸素系漂白剤で前処理してみてください。黄ばみや黒ずみなど、衣類全体の汚れを漂白し、白物をより白く、色・柄物をよりくっきり鮮やかにしたい場合には、漂白剤を使ったお洗濯がおすすめです。
洗濯機で洗う前に洗剤や漂白剤を黄ばみの部分に直接塗れば、あとは洗濯機に入れるだけで、黄ばみを落としてくれます。
さらに、がんこな黄ばみの場合には「つけおき洗い」を試してみましょう。洗濯機の洗濯槽や洗濯おけに、衣類がつかる程度のぬるま湯(40℃くらい)を用意します。その中に、通常の洗濯1回分の酵素入り洗剤と液体酸素系漂白剤を溶かし、衣類を30分?2時間つけおきします。つけおきが終わったら、洗剤液ごと洗濯機に入れ、水と他の衣類を足して、通常どおりお洗濯します。
汗染みが目立ちにくい
服選びも重要!
ここまでは、黄ばみの防ぎ方・落とし方を中心にお伝えしてきました。でも、逆転の発想でそもそも汗染みが目立たないような洋服を選ぶというのも一つの手ですよね。
では、どのような洋服だと汗染みが目立たないのでしょうか。
汗染みを目立たせないための洋服選びで重要なのは色。黒やネイビーなど、汗染みに負けないような濃い色の洋服は、汗染みができても比較的目立ちません。その他、原色系の洋服も汗染みに負けない色なので、おすすめです。反対に目立つのはパステルカラーなど淡い色調の洋服です。汗染みを防ぎたい!という場合には避けたほうが無難かもしれません。
洋服選びで汗染みに対策できれば、ますます心強いですね。もし、あらかじめ「今日は汗をたくさんかきそうで、汗染み対策が必要かも」と分かっているときは、洋服も工夫してみると良いかもしれせん。
そもそも汗染みを作らない方法
汗染みを作らないためには汗とりパッドや汗に強いインナーを利用する方法のほか、脇汗を抑える制汗デオドラント剤を使うのもおすすめです。
制汗デオドラント剤は汗染みやニオイの原因となる脇汗を出る前に抑えるので、より快適に過ごすことができます。
制汗デオドラント剤を使わない場合は、こまめに汗を拭き取るのも効果的。バッグに汗拭きシートをしのばせておいて、化粧室などでこまめに使うとよいでしょう。
このような制汗デオドラント剤や汗拭きシートを上手に取り入れることで、脇汗をケアして汗染みを防いでしまえば黄ばみに悩まないですみますね!
まとめ
汗染みや黄ばみの対策や対処法、いかがでしたか?
冒頭でも紹介した通り、汗染みや黄ばみの予防は身だしなみを整えることにもつながるので、ケアや対策は怠らないようにしておきたいところ。
そもそも、身だしなみを整えるのは、自分と接してくれている相手に対して、仕事の誠意や熱意を示したり、自分と気持ちよく過ごしてもらい、好感を持ってもらうためのもの。自分のためだけではなく、相手のためのものでもあります。清潔な身だしなみを心がければ、自分も、周りの人たちもより一層快適に過ごせることでしょう。
汗染みや黄ばみは、普段の生活の中に原因がたくさん潜んでいます。だからこそ、しっかりと対策をしているか、してないかの差が出やすい部分とも言えます。対策を怠らず、いつもすっきり清潔感のある洋服をまとい、周囲からの好印象をゲットしちゃいましょう。
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PROFILE
監修者:医学博士
五味常明先生昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。流通経済大学スポーツ健康学部、客員教授。