COLUMN / VOL.1
暑い季節、ただでさえ暑さでまいっているのに、体中から汗が出てきて嫌になってしまうことがありますよね。汗をかいてしまうと、「周りの人に汗臭いと思われないかな……」と不安になってくることも。
胸は脇に比べれば気にならないものの、意外と汗をかいてしまう場所。しかも女性の場合は、日中のほとんどの時間、ブラジャーで覆われていることが多く、汗をかいたときにブラジャーの内側にこもって、蒸れやすい環境と言えるかもしれません。そんな状態に不快さを感じたことはありませんか?
胸に汗をかいた後の胸のかゆみやニオイが気になる!という方もいるかもしれません。胸の汗や蒸れ、ニオイなどの悩みは、場所が場所だけになかなか人に相談しにくいのではないでしょうか。胸の汗や蒸れ、そして汗が原因となるトラブル、また制汗デオドラント剤や衣類用消臭剤を使った汗のニオイ対策などもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
胸がかゆい時に考えられる原因
胸がかゆい! でも人前ではかきにくい!胸にかゆみがあると、すごく不快ですよね。では、どうして胸はかゆくなるのでしょう? 胸のかゆみには様々な原因があります。ここでは代表的なものをご紹介いたします。
・ホルモン
女性ホルモンのひとつ、エストロゲンが不足すると、コラーゲンの不足につながり、肌の水分量を保つことができなくなります。これが、いわゆる「女性ホルモンのバランスが乱れる」という現象。更年期の方や生理前などに肌の潤いが失われてしまい、胸のかゆみなどの症状を引き起こします。
・乾燥
肌が乾燥してしまうとドライスキンになり、胸と髪の毛、ブラジャーや衣服などが擦れたときに皮脂がはがれてしまい、皮膚炎を引き起こすことがあります。皮膚炎によって肌のバリアが破壊され、外部から神経を刺激するとかゆみを引き起こします。
・ニキビ
ニキビの主な原因はストレス、不規則な生活、睡眠不足、皮脂の過剰分泌です。皮脂腺の多い胸では毛穴がつまってニキビができやすく、それがかゆみを引き起こします。
・病気
何らかの病気によりかゆみが引き起こされるケースもあります。かゆみが引かない場合は、速やかに専門医を受診してください。
なんだか最近、
胸のニオイが気になる?
ブラジャーを外した時や、ふと下を向いたときに、フワッと感じるニオイは脇から?それとももしかして胸から?脇や足などのニオイは気にしている方も多いのですが、意外と見落としがちなのが胸です。
汗は「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類から成る汗腺から分泌されます。「汗臭さ」の原因になるのは、主にアポクリン腺から分泌される汗です。エクリン腺がほぼ全身に分布しているのに対して、アポクリン腺は脇の下、乳首、陰部付近など、特定の場所にしかありません。
アポクリン腺からの汗は、タンパク質や脂質などの成分を含んでいて細菌が繁殖しやすく、他の場所に比べてニオイが気になる可能性が高いのです。そのため、アポクリン線が存在する場所は、他の場所に比べてよりしっかりと汗対策をしたいですよね。
今回は、アポクリン線が存在する部位の中でも、胸にフォーカスしてお話していきたいと思います。
日常的にブラジャーをしている胸は、谷間や胸の下のあたりが密着しやすく、汗で蒸れてきます。蒸れやすいということは、そこにたまった汗に皮脂や垢が混ざることで、雑菌が繁殖しやすい環境になります。
またアポクリン腺から出る汗の成分が、雑菌によって分解され、刺激臭のある独特のイヤなニオイとして発生します。暑いなと感じてシャツの首元をひっぱってパタパタと空気を入れた時やちょっと動いた時、下を向いた時などに、ニオイを感じるのはこのためです。
不快な胸汗の対策法
ブラジャーをしていて汗で蒸れてしまった場合、汗のベタつきなどで不快に感じることはありませんか?
暑い夏場や、冬でも暖房の強い場所にいる時、激しい運動をした後などは、胸にも大量の汗をかくことがあります。そうすると、大量に発生した汗がブラジャーに染みこんでしまい、不快感に加えて、「もしかしたらニオイがしてしまわないかな?」「他の人にどう思われるかな」と、不安な気持ちになることもあるのではないでしょうか。
そうした不快感や不安を解消したくて「汗をちゃんと拭きたいな」と思っても、場所が場所だけに人前で堂々と拭くこともできず、困ってしまうこともあるかと思います。では、胸汗の対策はどうすればよいのでしょう。
対策の一つが、汗を抑える効果が期待できる制汗デオドラント剤を使うこと。汗に加えて、ニオイを抑える効果も高い制汗デオドラント剤なら、蒸れたニオイも気になりません。
また、かいた汗をこまめに拭き取ることも効果的です。持ち歩きやすい汗拭きシートをバッグにしのばせておいて、化粧室などで使うと良いでしょう。さらに、胸に挟むタイプの汗取りパッドも有効です。パッドが汗を吸収してくれるので、べたつきから解放されます。
便利なグッズを積極的に活用することで、胸汗対策にアプローチできます。気になったものがあれば、試してみてはいかがでしょうか。
実は汗のニオイを
気にしている人は多い?
せっかく身だしなみに気を使っても、ニオイが気になると、どうも気分が晴れないもの。
ライオンの調査で、女性が汗のニオイを気にするタイミングは2回あって、思春期には体や意識の変化、新入社員になって数年の新社会人期には環境の変化により、エチケット意識が高まるということが分かりました。
(ライオン調べ 2010年12月 n=600名)
就職活動時期や新入社員となったばかりの方に制汗デオドラント剤を使用する理由を尋ねると、「周囲の人に、自分のニオイを気付かれたくない」との答えが多く、21~25歳女性では76%となりました。こうした結果から、汗のニオイケアは「大人の女性の身だしなみ・エチケット」として意識されていることが分かります。
みんな悩んでいるのは一緒。そう思うと、少し不安も和らいできませんか? ニオイが気になったときはしっかりケアして、晴れ晴れとした1日を過ごしたいですよね。
デリケートゾーンのニオイ対策
デリケートゾーンに多く分布しているアポクリン腺から出る汗には、脂肪やアンモニアなど雑菌にとって繁殖するのに必要な物質が分泌されます。そして、雑菌が繁殖しやすい環境にぴったりの、「高温」「多湿」という条件も整っているのがデリケートゾーン。
下着に覆われていることがほとんどのデリケートゾーンでは、高温と多湿に対処することはなかなか難しいので、いかに雑菌に栄養を与えないかが勝負になります。
雑菌に栄養を与えないためには、デリケートゾーンの清潔さを保つことが大切です。
まずは、お風呂でデリケートゾーンをしっかり洗う習慣をつけてください。そのときに注意してほしいのは、傷つけないこと。
デリケートゾーンの皮膚は薄く、とても繊細なので、たっぷりの泡と指の腹を使って丁寧に優しく洗うようにしてください。ボディ用の石けんではなく、低刺激なデリケートゾーン用 の石けんを使用してみるのもおすすめです。また、なるべく通気性の良いショーツを身に付けることや、汗などで汚れたらマメに替えるなど、できることから清潔さを保つ工夫をしていきましょう。
少しの工夫やケアの積み重ねが、ニオイの軽減につながっていきます。コツコツと対策をしていき、デリケートゾーンのニオイに負けないようにしたいですね。
ニオイが付いてしまった
下着の対処法
せっかくのお気に入りの下着だったのに、「なんだかいやなニオイがついてしまって、どうも取れないような気がする……。」「気のせいかな?」
でも、洗濯をしてニオイが消えたかなと思っても、着るとまたすぐにいやなニオイが戻ってしまう……。
こんなときにはどうしたら良いのでしょう?
もうあきらめるべき? いいえ、あきらめるのはまだ早いかもしれません。まずは、衣類用の消臭剤を使ってみましょう。衣類用消臭剤には、ニオイの原因となる菌を除菌する成分が入っているものや、消臭しながら香りも楽しめるものなどがあります。抗菌成分や除菌成分が配合された洗剤で洗ってみるのも効果が期待できます。
さらに、漂白剤も除菌・消臭効果が期待できるので役立ちます。どうしても下着のニオイが落ちない場合は、漂白剤でつけおき洗いを試してみましょう。
やり方は、洗濯をする前に、漂白剤と洗剤をお湯か水で溶かしたものに下着を入れて、30分?2時間つけおきした後、ふつうに洗濯するというもの。普段の洗濯でもニオイや汚れ落としに活躍する漂白剤で、このように下着についたニオイの消臭と除菌もできます。これらの方法は、汗染みがついてしまったインナーにも活用できますので、ぜひお試しください。
せっかくのお気に入りの下着、ニオイケアをしっかりして、大切に着てくださいね。
胸汗だけじゃない?
上半身の汗とニオイの原因は
やっぱり○○にもあった
自分でも見えやすく、かぎやすい胸の汗とニオイはどうしても気になりやすく、意識しがちですが、実は胸の汗のニオイと思っていたのが、違うところから出ていることも。そう、ブラジャーの汗染みやニオイは脇汗が原因の場合もあるのです。
脇と胸は場所が近いので、どちらから発生しているニオイなのか、なかなか分かりにくいことがあります。もし「いくら胸の汗対策をしても、なかなか効果がないな……」と思ったら、脇汗を疑ってみてください。
脇汗はニオイだけでなく、ブラジャーの汗染みの原因になる可能性があります。なぜなら、脇は汗腺の密度が高く汗が出やすいことに加えて、ブラジャーの上に位置しているので、脇汗がブラジャーに付着しやすいからです。
また胸と同様、脇にもアポクリン腺は分布しているので、ブラジャーに付いた脇汗が細菌の繁殖によって分解されたり、酸化されたりすることで、ブラジャーからイヤないニオイを発してしまいます。
ブラジャーの汗染みやニオイが気になる時には、脇汗についてもチェックしてみてください。
まとめ
胸の汗やニオイの原因とその対策、いかがでしたでしょうか。
自分のニオイは自分ではなかなか分かりにくいこともあるだけに、汗をかいたときに「臭うのかな? どうなんだろう」と考え込んでしまうこともあることでしょう。
とはいえ、胸の汗なんて誰にでも相談できるという場所ではないだけに、一人で悩んでいると、汗をかいたときに不安が不安を呼んでしまって、いつも通りに過ごせなくなってしまうこともあるのではないでしょうか。気になりだしたら、楽しいはずだったかもしれない1日も、憂鬱になります。せっかくなら、外出先でも汗やニオイを気にせずに、友達や大切な人、家族と楽しく過ごしたいものですよね。汗の悩みやトラブルなどのストレスを解消すれば、気持ちも晴れやかになってくるのではないでしょうか。
人に相談しにくい部位だけに悩ましい、胸の汗やニオイに伴うトラブル。どうしたら悩まされないで快適に過ごせるのか、知識を持っていると安心ですよね。今日も楽しい1日をお過ごしください。
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PROFILE
監修者:医学博士
五味常明先生昭和大学形成外科等で形成外科学、および多摩病院精神科等で精神医学を専攻。患者の心のケアを基本にしながら外科的手法を組み合わせる「心療外科」を新しい医学分野として提唱。ワキガ・体臭・多汗治療の現場で実践。わきがの治療法として、患者が手術結果を確認できる「直視下剥離法(五味法)」を確立。TVや雑誌でも活躍中。流通経済大学スポーツ健康学部、客員教授。